がんとの闘いの始まり

2020年秋、キャンプからの帰路に軽登山をしました。

健康な人ならハイキング気分で楽しめる山でしたが、私の場合、以前からの変形性膝関節症の痛みが起きてきて、やっとの思いで下山してきました。すぐに整形外科を受診して相談し、高位脛骨骨切り術の手術を受けることになりました。

 手術後の採血や精密検査などで、予想もしなかった大腸がんステージⅣと肝臓への転移が確認されました。後で聞くと、横行結腸から下行結腸に曲がる箇所に腸閉塞があって、カメラが先に進めないほど塞がれていたそうです。
そして、CTで撮影された肝臓には、再び見たくないほどの大きな黒い影が写し出されていました。

 一昔前だったら、間違いなく末期がんということで、長く生きることを諦めるしかない状況だったと思います。幸い医術の発達進歩により、今の時代はまだ生きる道が残されているようで、その後、大腸のがん切除手術を無事に終え、肝臓がんとの新たな闘いに向かって、何とか希望を捨てずに、この半年間治療に専念して過ごしてくることができました。

 一月から始まった抗がん剤治療は、昨日で4サイクル目を終了しました。

 いろいろなことが次々と起こったため、ところどころはすでに記憶が曖昧になってしまいましたが、忘れないうちに忘備録として治療のことや副作用のことなどを書いておこうと思います。

 私の場合、初日に点滴を行い、以後錠剤による抗がん剤を2週間飲み続け、最後の1週間を休薬するという形で計3週間を1サイクルとし、それを4サイクル行って手術に進んで行くという治療計画が設定されました。

今回の治療は、可能な中で最も強力な抗がん剤治療になるとの説明を受けましたので、私としては覚悟して治療に取り組んでいく気持ちでした。

・1サイクル目(3泊入院)

抗がん剤による副作用の状況確認のため、入院して治療を開始しました。長期に及ぶ抗がん剤投与が安全に行えるよう、治療に先立って点滴薬を注入する中心静脈ポートというカプセルを、右胸上の皮膚下に埋め込む手術を行いました。
ポートは、2cm程の大きさの本体と血管の中へ挿入するカテーテル部分から構成されており、本体部分に針を刺すことによって点滴漏れを起こしたりすることなく確実に薬剤が投与されます。手術は、局所麻酔により1時間弱で終わりました。
2日目は、半日かけて吐き気止めや3種類の抗がん剤点滴が行われました。
3日目は、朝晩2回、抗がん剤錠剤を服用しました。
4日目に退院。以後は2週間抗がん剤錠剤を服用し3週目を休薬しました。

―主な副作用―
3週目の終わり位から脱毛が始まりましたが、吐き気もなく食事は普通にとれ、3食調理もできました。通常とほとんど変わらない体調が不思議で、ほんとに抗がん剤が効いているのか不安になるくらいでした。

 ・2サイクル目(2泊入院)

2サイクル目は、すでに前回埋め込んだポートが利用できたため、2日間の入院で同様の点滴治療を終えました。

―主な副作用―
末梢神経症状:冷気を感じたり冷たいものに触れたりすると、ちくちくする痛みを感じるようになりました。冷蔵庫内やドアノブを触るときは手袋などしないとかなり痛むようになりました。髪をすくと束で脱毛するようになってきました。あわてて不織布の帽子をネットで取り寄せ、それを被って生活するものの部屋中に髪の毛が落ちていく状況でした。それでも吐き気は起こらず、食事も普通にとれ、3食調理もできていました。

 ・3サイクル目(日帰り)

3サイクル目からは、入院せず、初日の点滴を日帰りで行う形で治療を開始しました。
ところが...休薬期間に入った3週目に体温が急に38度台に上がったため、病院に連絡したところ、PCR検査を受けることになり、陰性だったことで診察は受けられましたが、白血球の数値が落ちていたため、用心のため休薬期間を1週間延ばさざるを得なくなり、すんなりと4サイクル目に進めませんでした。

―主な副作用―

末梢神経症状は更にきつくなってきて、脱毛は更に進行。
それでも吐き気は起こらず、食事も普通にとれ、3食調理までできたのが不思議でした。

 ・4サイクル目(日帰り)

4サイクル目は、3サイクル目のように途中遅延せず、何とか予定通り3週間で終えられることを願って治療を開始しました。
ところが...今度は点滴を受けてすぐに副作用?が起き始め、発熱もこれまでにないほど上昇するようになりました。治療途中の外来受診でPCR検査も受けました。さすがに4サイクル目になると、抗がん剤の蓄積作用?が激しくなり、これが副作用か?と実感しました。

―主な副作用―

末梢神経症状は少しだけ和らいできましたが、相変わらず脱毛は緩やかに進行。声枯れが起こるようになり、鼻水も出てくるようになりました。
3日後から体温が37度以上に上がり、39度台までの発熱を繰り返すようになりました。抗がん剤服用から約8時間後に発熱がピークになり、その後下がっていくというパターンを繰り返しました。それでも、食事時になると発熱は治まったため、食事をとるのに支障が出なかったのが幸いでした。

発熱はおさまったものの、始終ザワザワと鳥肌が立つような寒気が起きたり、熱はないのに急に我慢できないほどからだ全体が熱くなってびっしょり寝汗をかくようになりました。この症状は、高熱時の辛さより我慢できないほどで、気持ちも相当追い込まれました。

その後、すべての症状はだんだんと和らいできましたが、寒さ暑さの感じ方はまだ過敏に残っています。

  

私の今回の抗がん剤治療は、一番強い薬を使った治療だったようですが、副作用は私の予想よりかなり少なかった印象です。

緩和ケアのドクターや看護師さんや薬剤師さんのお話によると、昔は辛かった吐き気も、今は薬で緩和できるようになってきたそうです。抗がん剤治療中でも旅行する人もいるくらい・・・とか(今はコロナで無理でしょうが)。

この情報があったおかげで過剰に怖がることなく過ごせました。

それでも、副作用は個人差があって、今も吐き気に苦しみ悩まされている方も大勢いらっしゃるかと思います。それらの苦しみが将来さらに一層緩和されていくことを強く願っています。

 

ー追記ー

2021年3月24日、田中邦衛さんが亡くなられました。北海道にあこがれて移住してきた来た私には大変悲しい出来事でした。

3サイクル目の治療が終わる頃、池江里佳子さんが出場した五輪選考会を見ました。涙で代表に選ばれた姿を見て、心から拍手を送りたいと思いました。