転移性肝臓がん摘出手術、手術前日から三日間の記録

記憶が古くならない内に私自身の忘備録として書いておきたいと思います。

これは、私の個人的な体験ですが、一つの情報としてどなたかのお役にたつことがありましたら幸いです。

 

<手術日前日>・・・

朝から絶食で、24時間点滴となりました。

8時半くらいに水の下剤(2L)が渡されて、2時間で飲み切るように言われました。

味は美味しくないスポーツドリンクのようなものでしたが、後半の1Lを飲み切るのは少し辛かったです。

飲み切った頃から、下剤が効いてきて度々トイレに通いました。排泄液が透明になったら看護師さんに確認をしてもらいOKがでました。

その後、シャワーをしました。

 

肝臓の手術をするのになぜ大腸の時のように絶食しなければならないのか不思議でしたが、腸内を空っぽにしておかないと、全身麻酔により手術中に漏れ出てしまうこともあるため、万が一の汚染予防のためということでした。

 

16時より主治医からの術前説明があり、夫と共に聞きました。

10時間に及ぶ大手術であることや、がん細胞を含まない正常部分の肝容積の33%+α位を切除することなどを聞きました。

個人差はありますが、肝臓は切除後2週間余りで大きさだけは戻るという(再生能力を持った)臓器であることを聞いて驚きました。

私の場合、がんは大きかったのですが、肝臓の右側部分に片寄ってできていたこと、がん細胞による影響を除く肝機能自体には問題なかったこと、元気で健康な身体であったこと、などにより手術可能という判断になったそうです。

それでも左側部分を含めて5~6個位は小さいがんもあり、それらも切除するそうでした。

胃や大腸などは、切ってつないでという手術をするのに対し、肝臓は基本的には切るだけと聞いて驚きました。切ったあとはどうなるのか、出血が止まらず大変なことになるように思えました。

医師の説明では、肝臓は血管の集まりのような臓器であるものの、様々な血液製剤の開発や医療技術の進歩のおかげで、手術時の出血もかなり抑えられるようになってきているとのことでした。

 

ただ、ここに至るまで、手術するという結論が出るまで、先生は悩ましい事例だと何度もおっしゃっていたことを思い出します。コロナ禍により、一時は病院全体で大きな手術は控えるという方針も出ていたそうです。そうでなくとも、一昔前でしたら、わたしのような患者は手術して貰えなかったと思いました。

本当に、手術していただけたことで、命が救われたという想いを一層強く感じています。つくづく肝疾患などの持病を持っていなかったことが幸いだったと思いました。

 

それから、合併症についての詳しい説明がありました。

一番こわいのは、肝不全で死に至る場合もあるとのことでした。

がんを含めて切除した肝臓の容積が大きかった場合などは、身体への負担がかなり大きくなるため、人によっては命に関わるようなリスクが生じるとのことでした。

その他の合併症としては、腹水、胸水、創感染、術後出血、胆汁漏、癒着性腸閉塞、黄疸、腹壁瘢痕ヘルニア、腎機能低下、心・肺機能低下、術後せん妄、消化管穿孔・・・、などが事前に渡された病院の資料に書かれていました。

(私の場合は、主に胸水が貯まり、4日目位から肩でハァーハァーするくらい息苦しい症状がでました。

500ml以上貯留していると判断されたときは、細いチューブを胸腔内に挿入して排液するそうですが、私の場合は200mlから500mlの間位の量でそこまで多くなかったので、利尿剤の服用対応となりました。

それでも、走ったあとのような息苦しさは24時間治まらず、酸素チューブを鼻に装着してしのぎました。それでも相当苦しかったです。)

 

最後に先生がおっしゃったことは、今回は取れるものはすべて切除するが、私の場合は、今見えてなくてもがんの芽は潜んでいて、後日出てくる可能性も低くない。その場合は再手術も十分にあり得るとの説明を受けました。

 

その後、病室に戻ると麻酔科の先生がみえて詳しい説明がありました。

就寝前に下剤を飲みました。希望者には眠剤が処方されるとのことでしたが、今まで服用した経験がなかったので自然に任せることにしました。

その夜は空腹もあって寝つきが少々悪かったのですが、まぁ眠れました。

 

 

<手術当日>・・・

和式病衣に着替え8時頃まで待機していました。

それまで4人部屋でしたが、術後は個室に入れることになり荷物をまとめたりしていました。

8時20分位に病棟看護師さんと歩いて手術室フロアに向かいました、

さすが大学病院と思いましたが、手術室がたくさんあって、ドクターや看護師さんが手術準備の様子でした。見たことのない光景で近未来の工場のように感じました。

私の手術室は5番目位でした、

緊張して足が震えたりしたら恥ずかしいと思っていましたが、私自身は冷静で落ち着いていました。

手術台は、とてもふかふかで気持ち良いベッドだったと覚えています。

その後、硬膜外麻酔をして、全身麻酔となったのだと思います。

麻酔から覚めたのは翌日の朝方、部屋が明るくなってからだったと思います。

 

麻酔など術前後の作業を除く手術そのものにかかった時間は、予定通り10時間位だったようですが、わたし自身は、朝手術室に入ってから12~13時間経って病室に戻ったと思われます。また、夫の方は、先生のご厚意で、術後別室の方で摘出した検体を見せて貰ったようです。

 

<手術翌日>・・・

術後24時間は酸素マスクをすることになっていたこともあり、私はずっとベッドに寝ていました。特に痛みもなく苦しいということはありませんでした。

ドレーン(体液を出す管)や首に点滴の管、尿管も入っていて早く取れて欲しいと思いました。

その後、首の点滴の管、尿管が取れたのですっきりしました。夜からは病室のトイレに歩いて行けました。

看護師さんが度々きて採血・検温・血圧・血中酸素などをチェックしていました。

ポータブルのレントゲン装置が運ばれてきて、病室に居ながら胸部のレントゲンを撮りました。初めての経験でした。

水は飲めるようになりましたが、まだ絶食状態でした。

 

ここまでは特に苦しいこともなかったので、私としては少しほっとしていましたが、翌日以降から医学用語では「侵襲(しんしゅう)」と言われているもので大きく苦しむこととなります。 

(侵襲とは・・・生体の内部環境の恒常性を乱す可能性がある刺激全般。例えば手術、注射、投薬などの医療行為や外傷や感染症などを指す医学用語のようです。)

 

退院後の話もなく、いきなり手術日前後の回顧録から始まってしまいましたが、退院から5日経って、パソコンに向かうだけなら何とかできるようになってきたので、体調の良い時に少しずつ書き溜めて、久しぶりにブログを投稿してみました。退院後のことについては、後日あらためて残したいと思っています。

また、手術前後から今日までたくさんのコメントを頂いておりましたが、対応できず申し訳ございませんでした。
あらためてこの場をおかりしてお礼申し上げます。ありがとうございました。