転移性肝臓がん摘出手術、地獄のような4日目からの記録

 

手術直後は予想外に体が動き、3日目にはもう苦労なく廊下を歩けるようになっていたので、4日目辺りからブログ投稿可能かな?と思っていました。

歩いたりすると体の回復が早いということでしたので、廊下を歩いたり病室内でもベッドに横にならずに過ごしていました。

ところが、4日目から体調が一変して、厳しい体調になっていきました。

 

寝ていても、起きていても、肩で息するようにハァーハァーぜいぜいと息苦しく、駆け足をしたあとのような息苦しさで、何もできなくなりました。

 

 駆け足ならだんだんと呼吸は落ち着いてきて楽になるのですがいつになっても楽になりません。疲れると横になりたいのですが、背中が圧迫されると更に苦しくなるので寝ることもできません。こんな経験は今までになかったことでしたので、心身共に苦しい状況でした。そのうち酸素チューブも再度装着するようになりました。それでも、息苦しさは継続します。

 

コロナ患者さんが息で苦しんでいる様子がテレビで放送されたことがありましたが、退院後も肺疾患などの後遺症が残って苦しんでいらっしゃる方も少なくないようです。改めて私も「息苦しさの辛さ」を実感しました。

 

レントゲンの結果では、肺の辺りにかなりの水が溜まり肺を圧迫しているとのことでした。

明確な量は分からないと言われたので、私が選択肢を挙げて聞いてみたら、最大時には200~500mlくらいの量の水が溜まっていたとのことでした。普段飲んでいた350ccの缶ビール一本くらいもある量!

症状が重い場合は針をさして水抜きするようですが、それはそれでリスクもあるとか。
私の場合は、利尿作用のあるフロセミド錠20mg「NP」という薬を服用することになりました。薬の効果で、体内に溜まった水分を尿に変えて排出させるとのことですが、私の場合のように特定箇所の水分を減らすのではなく、身体全体での過剰な水分が対象となるので、針で直接吸い出すのに比べたら、かなりゆっくりした減り方になるようです。

  

次に、息苦しさと同時に、お水を飲むのも嫌なくらいの超満腹感とお腹の張りが出てきて、全く食事がとれなくなりました。

 

 何も食べてないのに一口も入る隙間がないほどの超満腹感です。食事をとるどころか薬を飲むのさえ苦しいという状況でした。

医師の話では、手術中に胃などの臓器に触れることで刺激を受けたり、また術後の消耗で胃腸の働きが弱くなったりするとのことでしたが、これも前回触れた「侵襲」と呼ばれているものによる一つの症状なのかも知れません。病院食が運ばれてくると食べなければというプレッシャーで辛い日々が続きました。「食べられそうなものを売店で買ってきて貰って食べては?」とドクターに言われましたが、日ごろ大好きなものでも一切受け付けませんでした。少なくとも5割くらいは食べられないと退院できないそうで、状況が変わらない場合は、転院して静養するのも選択肢と言われ、気持ち的にも更に追い込まれていきました。

実は私の母は、長年骨粗しょう症から背骨陥没骨折の痛みに苦しんできました。痛みが強いとどうしても食が進まず、本人も家族も心配しながら暮らしてきました。

そんな時、私は母に、「食べられそうなものだけでも食べてみたら?」とか、「食べたいものがあったら言ってね」とか声掛けしたものでした。まさに上で言われたのと同じような言葉をかけていたのでした。

私自身が食べられなくなった今を思うと、これまで母に対してかわいそうな物言いをしてきたな、と反省しています。母本人は食べる努力はしていたし、それでも食べられなくて体重減少を気にしたりしていました。食を受け付けないときに、何か食べられそうな物を思い浮かべることは、かえって気持ち悪くなるということが分かりました。

今の私も食材が並んでいるマーケットには行きたくないし、食べたいものを何も思い浮かべることができません。

今でも、食事タイムまでは食べたくないと思っているのですが、私がそれなら食べたいと思うようなものを、食べられる量で夫が作ってくれるようになったので、徐々に食べたいと思う気持ちを思い出してきているように思います。

以前普通に食べれていたときの食事量を100とすると、今は60くらいでしょうか?

 

 

また、普段は家族が驚くほど寝つきが良いのに急に眠れなくなって、息苦しい状態の中で夜通し起きていることはとても辛いものがありました。

 

21時の消灯から夜明け前の3時半位まで、肩でハァーハァー息をしながら眠れなかったのは精神的にもかなり辛いものでした。3時半を過ぎるとだんだんと明るくなってきて、私の気持ちも落ち着いてきて、ウトウトして眠れるようになりました。

毎日睡眠時間が2時間位でした。夏至が近づいてきて夜明けが早い季節だったので助かりましたが、これが冬だったらと思うと今思い出しても怖い位です。

午前2時頃が一番辛くて、毎晩大きな声で叫びたいほどの状況でした。このままでは鬱的症状になってしまいそうで、仕方なく誘眠剤を処方してもらいました。

でも、最初の頃は誘眠剤もほとんど効かず、息苦しいのに加えて夜中眠れなかったので、かなり辛い状態が続きました。

 

 

息苦しい!、食べれない!、眠れない!の三重苦。

一つ一つは普段でもありそうな現象ですが、トリプルになると地獄でした。

 

今までの人生で、健康面で苦労した経験があまりなかっただけに、逆に精神的にかなり追い込まれたような状態になりました。

 

ここでも、あらためて大手術だったんだと実感させられました。

 

手術から10日くらい経った昼頃からやっと微かに回復の兆しが出てきて、やっと気持ちが救われた思いがしました。朝食はパン、昼食はうどんに変更して貰い少しずつ食べられるようになってきました。

 

息苦しい!、食べれない!、眠れない!の三重苦も少しずつ楽になってきました。

 

そうして、手術から17日目に退院することになりました。

 

退院して帰宅した午後、息苦しさがまた襲ってきて背中が痛くなりました。あまりに背中が苦しくて、夫にマッサージしてもらいました。気持ち良かったせいか、トータル2時間くらいしてもらったような気がします。

そうしたら、息苦しいのもだいぶ楽になりました。きっとそんな日が続いていたので、背中の筋肉も相当こわばって、深い呼吸もうまくいってなかったようです。

 

それから、息苦しさを和らげる効果があると、夫がネットで探してきた「肺ストレッチ(呼吸筋ストレッチ?)」というのもやってみました。肩甲骨を回しながら呼吸をしている内に呼吸そのものがしやすくなってきているのに気づきました。術後、こんなに呼吸しやすくなったのは初めてでした。横になっても息苦しさを感じなくなってて驚きました。

それから毎日「肺ストレッチ」は続けています。

一番息苦しかったときの苦しさを100とすると、今は5くらいになりました。

睡眠の方も、深夜途中に一度目覚めますが、トータル5時間位と普通に寝られるようになりました。入院していた時の習慣で朝は早く目覚めてしまいますが、その分午後のお昼寝が習慣化するようになりました。

 

 

退院して今日で24日目。毎食夫が用意してくれる食事を食べ、私は食後の洗いものを担当しています。今は主婦-主夫逆転です。

 

退院する前、私の予測では、簡単なものなら調理できると思っていましたが、食材が並ぶと今でもまだ辛い感じがします。マーケットで食材を眺めるのもまだ無理なので、買い物も夫一人で行ってきます。

思うようにいかない日々が続き、何となく鬱っぽい感じに襲われがちになります。

侵襲が大きかった分、回復にも時間がかかるんだということを受け入れ、今はあせらずじっくり、回復していくのを待とうと思っています。

何より、手術をして頂けたことや合併症も最小限であったことに感謝して、少しずつ元気を取り戻していけたらと考えています。