子どもの能力を伸ばすのが上手だった母

 

私の母は本人も頑張り屋さんでしたが、子どもの能力を伸ばすのが上手でした。

私の姉は小学生の頃から算数が不得手で性格的にものんびり屋さんでしたので、勉強にあまり意欲は持てなかったようでした。

中学生になるとき、母は姉にこう言ったそうです。

「英語は中学一年から始まる教科だから、これから頑張ればいくらでも成果をあげることができる。だから頑張ってみたら?」

そう言われた姉は、とにかく英語を頑張ったようで、学年でもトップクラスになり、それを維持していったようでした。定期テストのときも、秀才君達に点数を聞かれる程ライバル視されたそうで自信を持てるようになったそうでした。

その後も英語の勉強は続けていて、大人になってからは生徒に教えるようにもなり、今は海外旅行に行って直接会話したいなどと、ますます磨きがかかっているようです。             

 

妹が小学校1年生の頃、母は仕事をしていて、いわゆる鍵っ子状態だったようです。

母は、妹のために家におやつと本を置いて行ったそうですが、それでもさみしくて泣ける日もあったそうです。

小学校の授業で、担任の先生が、「なにか物語を話せる人はいませんか?」と言ったそうです。

そのとき、妹だけが手をあげて、一つの物語をみんなに語ったそうでした。

終わったあとまた先生は、「次も物語を話せる人はいませんか?」と。

そうしたら、又妹が手を挙げたそうでした。その語りを終えてからも「わたしもっとお話を知っています」と言ったら、先生は「〇〇ちゃんは、お話が泉のようにわいてくるのね」と褒めて下さったそうでした。

それまではそれほど目立たなかった子どもでしたが、それをきっかけに自信をもてるようになったようでした。

母はそのことを聞いて、妹と一緒に喜んでくれたそうでした。

母は自分が読書好きだったこともありますが、機会をみつけては私たちに本を買ってくれました。妹のことは先生の励ましの言葉も大きいと思いますが、物語をたくさん話せたり読書好きになっていったことは、子供たちのために本ある環境を作ってくれた母のおかげでもあると思っています。

 

私が高校生の頃、母が忙しくて、私と姉とで交替で夕ご飯を作ることがありました。

私は張り切って料理本を見ながら、クリームコロッケを作りました。

それまで料理の経験もないのに、全くの無謀としか言いようがない選択でした。

一応形にはなったのでみんなに食べて貰ったのですが、姉と妹には不評で「なんか生っぽい。美味しくない。」と言われてしまう有様でした。

私としては手順通りに作ったつもりだったのですが、自分で食べても美味しくありませんでした。

でも、母は完食してくれて、「何でも最初から上手にできる人はいないからね。」と言ってくれました。私も、それから少しずつ経験を積んで、家族にも喜んで貰えるようになりました。

今、私が料理やお菓子作りが好きなのも、原点は母の一言からと思っています。

 

私の母は、子供を抱きしめるような優しい母というタイプではありませんでしたが、

子どもの能力を伸ばすことにおいては優れていたと思います。

それは私の子育てにも生かされていました。

私も決して優しいお母さんタイプではありませんでしたが、いま娘たち二人は、好きなことをみつけて苦労しながらも頑張っているようです。